【第111話】マーケットリサーチ
市場調査って何の為に、どの様にして行われるか、詳しくご存知ですか?
いや、ここで全貌を明らかにしてしまうと、商売上がったりな部分もありますので、
今回のこのブログでは、「市場調査のワナ」や「誤解されがちな部分」など、
細かい裏の部分を中心に書いていきたいと思います。
実は今日、授業でマーケットリサーチの話をしたんですよね・・・・。
そのままだと勿体無いので、ブログで記録に残しておこうかな?と思いました。はい。
【1】 結果の『導き方』
最初に。やり方によって、全然違う結果が出てしまうのは当たり前の話。
上手くコントロールしながら、「自分が出したい答えを導く」様なやり方もあります。
まずですね、例えば街頭でアンケートを取ったとします。
そうですねぇ・・・、例えばテーマは、「好きな清涼飲料水」だとしましょうか。
【パターン①】
「好きな清涼飲料水はなんですか?」
「え・・?好きな清涼飲料水・・・。えーと、なんだろ、ポカリスウェット?」
で、答えさせるパターン。
【パターン②】
「好きな清涼飲料水はなんですか?この中から幾つでも選んでください。」
「えーと、これと・・これと・・・、そうそう、こんなのもあったな。あ、これも好き」
で、答えさせるパターン。
お分かりだとは思いますが、【パターン①】では正確なデータが出ません。
いきなり聞かれたとしても、普段飲んでるあの、大好きな、あのジュースがパッと出てこない。
こんな事はいくらだってあります。
一方、【パターン②】では、「いくつでも」選択してよい、つまり複数選択解答式ですし、
アンケート用紙に「エントリー」されてますので、
「本当は一番好きなのは違うジュースだったのに、咄嗟に思い出せなくて違うのを書いちゃった」
なんて事もないわけです。
さらに、「清涼飲料水」の定義をアンケート用紙のエントリー欄で語ってくれています。
人によっては、「アクエリアス」や「ポカリスウェット」「ゲータレード」等のスポーツドリンクや、
「サプリ」「ダカラ」等の『甘みがついてる系統』以外を候補から除外してしまうかも知れません。
しかし、実はその中に「UCCのコーヒー」や「サントリーのウーロン茶」を含めても良いのだ、
と言うことに気がつかない人も居るかも知れません。
以上の結果を踏まえて、
「街頭で好きな清涼飲料水は何?」って尋ねたら、「コーラだ」って言う答えが出ました、と。
【パターン① 】の調査方法で言われても、全然信憑性が無かったりするわけです。
ただ一番有名で咄嗟に出やすいジュース名ってだけだろ、みたいな。
いや、コカコーラの服を着て、【パターン①】の聞き方でリサーチして、
「コーラナンバー1!イエイ!グレイト!」って答えさせたいタメのリサーチもありますが。
【2】 データの信憑性
「リサーチの結果、この商品は売れるとわかった。値段は1500円が一番良いという結果も出た。
一人3個までならば買うという結果もでた。500人の標本調査だが、全国に対象となる年齢である、
16歳~25歳の女性が○○万人居て、一人3個あたりって事は○○個売れる!
わが社は○○円の売り上げが出るぞ!ヒャッホウ!」
と。ちょっとまて、と。
これはあまりにも短絡的過ぎます。
リサーチの結果をあまりにも鵜呑みにしすぎると、大きな失敗をします。
アンケートは答えるだけだしね。そこでカネを出して買えって言われたわけじゃないし。
実際に、買うって答えた人に、「そうですか。じゃあ買ってください。はい、1500円」
って言って見なさいよ。「え・・・?いや・・・。」と逃げてしまいますから。
一番稚拙でダメなリサーチ方法は、「直球ストレート」な聞き方をする場合。
「Aという商品のサンプルがあります。どうです?発売したら買ってくれますか?」
と聞かれて、大抵の人は「いいえ、買いません」とは答えないわけです。
逆に、「こんな商品があるんですけど、こんなショボイの買いませんよねぇ?」
と聞かれたら、「そうですねぇ。買わないかも知れません」と答えてくれる可能性が高いわけです。
※女性を口説く時にも使えるテクニックですが、
例えば、みんなで飲み会をして、一次会・二次会が終了。さて、ここから先は自由行動。
お目当ての女性が居たとして、どうやって相手を次の飲みに誘うか。
「この後、どうする・・・?どっか行く・・?それとも・・・、帰っちゃう・・・?」
と言われたら、
相手は8割以上の確率で、「ああ・・、じゃあ今日は帰るよ・・・。」と言います。
逆に、
「この後、どうする・・・?帰っちゃう・・・?それとも・・・、どっか行こうか・・・?」
と聞くと、
相手は、「そうだねぇ、じゃあもう一件行こうか?」と言ってくれます。
理由はもうお解かりでしょうが、
人間は相手の言っている事を「否定する」のにエネルギーを使うんです。
ですから、文章の後ろに「OKをして欲しい」内容を持ってくるように話せば、
すんなりと「いいよ」と言ってくれるのです。
例えば前者の質問をされて、「ううん、どっか行こうよ」とはナカナカ言いづらいし、
例えば後者の質問をされて、「ううん、帰るよ」とはナカナカ言いづらいものです。
あ、本題からそれてしまいましたが、これは「誘導尋問で答えさせたい」場合ですから、
「本当の本物データが欲しい場合の質問方法」ではありません。
「売れる」というデータが出ているのに売れないのは、
「欲しいですか?」と聞いて「はい」と素直に答えてしまった人を相手に、
何の疑いもしなかったせいでしょう。
聞きたい事は、「ついでに聞いてるみたいに」質問の海の中に紛れ込ませてやると良いです。
間違ったデータが出やすい調査の見本。
それは、「見栄を張って答えてしまいそうな系統の質問」です。
例えば、
「あなたの年収はいくらですか?」←30代~40代の層に多い。
「あなたの初体験の年齢を教えて下さい。」←男女共に、高校生~大学生ぐらいの年代に多い。
「初めてキスをしたのは何歳の時ですか?」←これは何故か男の子が多い傾向があります。
「一ヶ月に使えるお小遣いの額はいくらですか?」←既婚の男性に多いです。
「貯金はいくらありますか?」←これも30代~40代の層。
「あなたのTOEICの最高得点を教えて下さい」←大学生~35歳前後に多い。
などなど。
匿名の無記名アンケートでも、人間って誰に対してなのかは知りませんが、
「どうせ誰も見てないし」「どうせ誰も調べられないし」って感じで、
見栄を張ってしまう事があるのです。
ですから、リサーチと人間の心理学を知らないどっかの雑誌記者なんかが、
その辺を歩いている女性に無記名アンケートをお願いし、
「初体験の年齢は?」なんてストレートな聞き方をすると、
本当はまだなのに、24歳にもなってまだなんて恥ずかしい、とか考えてしまって、
ついつい「15歳」とか書いたりして。
で、出てきた結果、「18歳~25歳の女性に聞いた、初体験の平均年齢」が、
「16.3歳」なんていう結果になって、
それを見た男性が、「おいおい、マジかよ!」なんてなっちゃうわけですよ。
そのぐらいの年頃の娘さんがいるお父さんなんて、
「本当かよ・・・。うちの子は大丈夫かな・・・。」なんて本気で心配しちゃうわけですよ。
例えば、
「東京都内の高校に通う女子高生のうち、非処女率が14%、86%が経験済み」
なんていうデータに踊らされて、何故か友達に負けたくないとか思って、
どうでもいい奴と(以下略
「自己申告制」で「ついつい見栄を張っちゃう系統」のアンケートは、
やり方によっては完璧にクズデータに成り下がってしまうわけです。
ではどの様にすれば、信憑性のあるデータにする事が出来るか?
それは、「100の質問」では無いですが、質問を沢山用意する事です。
ストレートに1問だけ聞かれると、「どうせわかんないし」って感じで、
ウソを付いちゃう場合もあるのですが、
質問があまりにも多くて、そして詳細であればあるほど、
「面倒くさくて考えてまでウソつきたくないや。どうせ誰も見てないし、思った通りに書こう」
と、発想が逆転してしまいます。
また、あまりにも質問項目が多いと、矛盾が発生しやすいですから、
そんな事を注意してまで、帳尻や辻褄を合わせてまで、「見栄を張ろう」という気分には
ならないわけです。
実際、そこまでして見栄を張ってでも、ウソをつき続けたい人もいるにはいますが、
その様な人は「ファルスメモリー症候群」という立派な病気ですから、注意して下さい。
まさに「一個のウソが100個のウソを呼ぶので、ウソを付くのは大変だ、の法則」
(そんなのあるのかな?)
例) 街頭アンケートで、年収を聞く事が目的のリサーチ
⇒あくまでも、「年収を聞く」のが最終目標。その他の部分はどうでも良いと言える場合。
対象者は駅やオフィス街を歩いているビジネスマン・サラリーマン。
これはサンプルですが、架空の回答者の答えをつけておきます。
【仕事のやりがいと転職に関する意識のアンケート】←名目
<質問1> あなたは現在ご結婚されていますか? はい
<質問2> 質問1ではいと答えた方。恋愛結婚ですか?見合い結婚ですか? 恋愛
<質問3> 質問1でいいえと答えた方。結婚する予定の恋人はいますか? -
<質問4> お仕事は楽しいと感じますか?また、なぜそう思いますか?
いいえ ・ やりたいと思っているプロジェクトを実行させてもらえないから。
<質問5> あなたにとって、「やりがいのある仕事」とはどの様な物ですか?
いくつでも○を付けて下さい。
1.自分がリーダーとなってプロジェクトを実行できる業務。
2.信頼できる上司から、全幅の信頼を与えられて遂行する業務。
3.会社に利益を与える業務。
4.会社が基幹としている業務を担う。
5.部下の信頼を得て、チーム一丸となって成功に向かう業務。
・
・
(中 略)
・
・
<質問68> あなたの仕事ぶりは給料に見合っていると思いますか? いいえ
<質問69> 質問68で「はい」と答えた方。貰いすぎだと思いますか? -
<質問70> 質問68で「いいえ」と答えた方。あと「最低で」幾ら欲しいのかをお答え下さい。
年収にしてあと100万円
・
・
(中 略)
・
・
<質問90> あなたには何人の部下がいますか? 3人
<質問91> あなたの役職をお答え下さい 営業部営業2課係長
<質問92> 現在の税込み年収をお答え下さい。 440万円
<質問93> 現在のお給料で、生活は満足した物になっていますか?また、2倍の給料を
出してくれる会社があったとしたら、転職を考えますか?
満足していません。転職は考えます。
・
・
(中 略)
・
・
<質問100> 転職に関する情報を得る事が出来るとしたら、その情報を希望しますか?
もし希望される場合は、以下の項目に住所と氏名をご記入下さい。
(任意で結構です) 希望しません。
☆ ありがとうございました。
おわかりでしょうか?恐らくこのアンケートを実施している途中で、会社に対する不満が、
本人が知らないうちに出てくるのではないかと思います。
項目も半端でなく多いですし、この項目を全て答えている間で、
「全ての辻褄を合わせる為に見栄を張ろう」なんていう気持ちは消えてしまうと思います。
「結婚してて生活かかってる」「仕事に不満」「年収は足りないと思っている」「役職は係長」
「あと100万円給料上げて欲しい!」
でも、
「年収は1200万円でーす!イエイ!」
なんて答える奴はいない。
タイトルが「仕事のやりがいと転職について」ですから、
年収の質問をされたとしても、無防備に素直に答えてしまう事でしょう。
だから、
雑誌の特集による調査結果なんかで、
「おいおい。俺と同じくらいの年代の奴は随分もらってるんだなぁ・・・。」
「うわ!俺とタメなのに、貯金が平均で500万円もあるのかよ・・・。」
なんて、ガッカリする必要は無いのですよ。
少なからず、ハッタリのデータが平均値を上げてたりしますからね。
あー、なんだか超長くなりましたよ。
またリサーチについては差しさわりの無い内容で第二弾を行きたいな、と思います。